2009年4月 9日 (木)

老齢者の入れ歯

 先日の日曜日には、何年も通院してくださった患者さんの入れ歯の調整に、入院先の介護施設のような病院に往診してきました。この方の入れ歯は、私の診療室に通院する前に作られていたアタッチメントを使用した手の込んだ入れ歯でして、しっかり作られているのですが、患者さんの手先の筋力が落ちてきた現状では扱いが難しくなってしまっています。扱いやすい装置にした方が良いとは思うのですが、往診の環境で体力が落ちた患者さんのアタッチメントを外すには無理があるので、お話を伺いながら、微調整しかできません。
 今日の朝一番で来院された患者さんは、お体は元気なのですが、痴呆が進んでしまいご自分の歯を磨くことができず、残存歯が4本になってしまいました。それでも、入れ歯に慣れていたせいか、食事の方は不自由なくできているようです。この患者さんは昔からよくおしゃべりする方で、今日も明るく世間話をしていましたが、ご主人がつい最近なくなって葬式をしたことも覚えていないようでした。悩みのない子供のような振る舞いです。
 往診してきた患者さんの付き添いの方から連絡が入り、日曜日に入れ歯を調整したら、それまで使用するのをいやがり装着していなかったのが、使用するようになったら少し舌が痛くなったというこでした。できれば入れ歯を入れてよく噛めるようになって、体力をつけてもらいたい思いで診療後の夜に往診してきました。
 昼間は明るくて快適な病院という印象がありましたが、夜はさずがにスタッフも少なくなるし、消灯されている場所もあるので怖い感じがありました。患者さんが言うには、訳の分からないうめき声や呪文のような音も聞こえるようようです。このまま、病気のままでホスピスにいるような暮らしなら早くお迎えが来てほしいとも言ってました。年をとって病気になるのは辛いことでしょうね。

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2009年3月22日 (日)

健康食品ー黒酢にご注意

 昨日、定期的にいらっしていただいている患者さんが、歯が数カ所欠けたと言って来院されました。昨年10月以来ですので、普段より短期間でしたが、五カ所程崩れていた歯がありました。
 お口の手入れは良い方でしたので、何か生活面や食べ物が変わりましたかと尋ねたところ、別に変わったことはないけど、昨年7月から健康に良いからと黒酢を飲み始めましたと答えてくれました。
 黒酢には必須アミノ酸が多く含まれ、美容と健康、ダイエットにも効くし、抗がん作用もあるようです。しかしながら、酢ですので、PH3.2とかなり酸性度が高い食品です。ちなみに、PH5.4以下になりますと、歯のカルシウム成分が溶解しますので、黒酢を飲み続ければ虫歯が多発してもおかしくありません。実際、昨年にも同様に、急に多数の歯が虫歯になった中年の女性がおられました。その方は今回の患者さんほど歯磨きが熱心でなかったので、かなりひどい状態でした。
 数年前には、ヤクルトを飲むようにしてから虫歯が多発した初老の男性もいらっしゃいました。もちろん、砂糖が多く含まれている飲料水を飲み続ければ、相当歯が丈夫(耐酸性が強い)か、きちんと歯磨きしなければ虫歯になります。
 その他に、柑橘類(100%オレンジジュース)PH 4.6 、 ビール PH 3.8 、スポーツドリンク PH 3.4 、 栄養ドリンク PH 3.0 、コーラ PH 2.1 なども注意していただきたいと思います。

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2009年2月19日 (木)

プラシーボ

Hitohanaze
 日本歯科医師会の機関新聞である「日歯広報」に、プラシーボの効果について、この分野での著作の多い浜松医科大学の名誉教授・高田明和先生のコラムが掲載されていました。
 一般的にはプラシーボ効果を期待するのはいかさま医者扱いされているような風潮がありますが、西洋医学の最先端を行っている米国でも積極的な応用が研究されているようです。特に、痛みで患者を苦しめる線維筋痛症のように、原因が分からず治療法が確立していない疾患に対しては、砂糖の塊(シュガー・ピル)をプラシーボとして応用されているようです。砂糖そのものが、疾患に対して効果があるとして利用されているのではなく、砂糖の甘さで気持ちが和らぎリラックス効果で痛みが和らぐことを期待しての処方です。
 生き物には自然治癒能力が備わっている。その能力は清潔で、安静な状態で高まると常々患者さんにお話ししてますが、気持ちを落ち着かせることが痛みの感覚を和らげる効果があるのでしょう。「人はなぜ治るのか」などの著作で有名なアンドルー・ワイル博士は著作の中で、純粋に西洋医学的に物理的な治療法でさえ、医師がその方法で治ると確信していてそれが患者さんに伝わるから治るのだと述べておられます。西洋医学も、原始的なシャーマニズムも医療の原点は同じようです。自然治癒をどの程度期待するかの違いと、それを意識して治療するかしないかなのだそうです。
 痛むはずがない歯の痛みが主訴で来院された患者さんが、結局は線維筋痛症であったことがあります。痛みの理由が分かって落ち着いたと言われました。病気が治った訳ではないのですが、痛みは和らいだそうです。なにげに人間は複雑です。

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2008年11月27日 (木)

骨粗鬆症と歯科治療

 歯科医師会からビスフォスフォネート系薬剤を内服されている患者さんの歯を抜いたり、歯周病治療で骨を露出すると周囲の骨が腐骨化するから注意するようにとの情報が、ここ1〜2年前から出されています。腐骨化することにより、治療の対象の歯ばかりでなく、周囲の歯も骨ごと抜けてしまうこともあるとのことです。そんな怖い薬はよっぽどのことでもない限り処方されないだろうから、自分の臨床にはあまり関係ないと思っていたら大間違いでした。もう何人にもの患者さんが処方されていました。どうしてそんな怖い薬を内服するようになったのですかと患者さんに尋ねたところ、日常生活では何も骨粗鬆症の自覚はないが、お医者さんが骨密度が平均値に達していないから内服するよう指示されたと全員がお答えになりました。
 80代の女性の場合は、20年以上前に治療した(本人もいつ治療したか覚えていないくらい前)歯の周囲歯肉が腫脹して来院されました。根管治療がされてありまして、多少根の先に病巣らしきものがレントゲン像に写っていましたが、数ヶ月前にボナロンというビスフォスフォネート系薬剤を飲み始める前には何年間も何の症状もなかった歯です。抗生物質を内服していただくため、処方箋を出しましたら、薬局で同様の症状が出る患者さんが頻繁にいらっしゃると言われたそうです。
 ビスフォスフォネート系薬剤は破骨細胞の活動を抑制することにより、骨粗鬆症を予防できるようですが、その反面正常な骨の代謝を阻害してしまうようです。そのため、観血的な歯科治療が非常に危険なことになります。骨粗鬆症で骨折して寝たきりになるリスクも避けなければなりませんが、高齢になって歯が万全な人など皆無な訳ですから、ビスフォスフォネート系薬剤の処方を手軽にしてほしくないと強くお医者さんに訴えたいものです。

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2008年11月24日 (月)

争いと言葉

 大統領選に限らず、日本の自民党と民主党の争いも言葉によって行われています。いかに自分の主張が正しくて、相手が間違っているかを説明し合っています。双方の説明は共に理路整然といているようですが、どちらも正しいということはあり得ない訳だから、お互いの主張のどこかに矛盾があるはずです。
 多分それは、ある現象を言葉で表し、その言葉で作られた文章を公理のごとく使って推論を展開していく手法に問題があるからだと思います。数式を使っての理論展開と違い、言葉を使っての理論展開はイメージを伴っているために理論的ない事柄も合理的と思わせることが可能なのだと思います。それが言葉のレトリックというのでしょう。
 悪名高いヒトラーは、ユダヤ人を迫害することも戦争によって自国の領土を拡大することも善であるように国民を誘導しました。今考えればどうしてと思われることも、言葉の魔術でできてしまったことが恐ろしいし、現在多くの国際紛争も同様のテクニックを悪用している権力者がいるから起きているのでしょう。軍国主義時代の日本もそうであったようです。
 一介の歯医者がこんなことを考えてこんなことを書いて、歯科の勉強をしているのかと心配されそうですね?
 自分の言葉を大切にして、患者さんとお話ししなければと考える次第です。
 

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2008年11月15日 (土)

オレオレ詐欺

 ここ数年「オレオレ詐欺」による被害が報告されています。オバマ新大統領はことばを上手に使って有権者にご自分の考えを伝えたのだと思うのですが、この「オレオレ詐欺」の犯人は、ことばを使って老人を不安に陥れ正常な判断能力を奪ったようです。
 もとより、映画でも演劇でも、うまい役者には乗せられてしまうのが普通だし、それが楽しみでもあるのですが、ことばが介在しなければ成り立たない世界でもあります。小説や詩のような文字で書かれたことばでも、人は心を動かされます。音声がついて情感が伴えばなおさらでしょう。
 ことばは人を幸福にもしますが、不幸にもします。真実を伝えることもできますが、うそでだますこともできます。
 核兵器など、人類は自分で開発した科学技術によって滅亡するかもしれないとか言われることがありますが、その大元は『ことば』なのですね。

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2008年9月21日 (日)

性差医療

 9/19(金)診療を少し早めに切り上げて『性差医療』の第一人者であられる天野恵子先生の講演を聴いてきました。長年のご研究と臨床経験に裏付けられたお話が矢継ぎ早に展開されたので、非常に興味のあるお話だったのですが、ノートをしっかりとる余裕がなく、知識が不確かになってしまったのは残念です。印象に残ったお話は、女性ホルモンのエストロゲンが脳卒中や心筋梗塞に罹りにくくするため、60歳前の女性ではこのような疾患になる人が男性の六分の一程度のようです。また、自殺者なども、性差が大きく、それらが平均年齢の差になって現れているとのことでした。
 よく問題にされるコレステロールについても性差があって、コレステロールを下げるために薬を飲むかどうかの基準値も男女差を考慮すべきだとのお話もありました。必要の無い薬を処方されて、何千億円もの医療費が無駄遣いされているようです。

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2008年7月 2日 (水)

この年で

 今日はお二人の女性から、『この年で歯並びを気にするなんておかしいですか?』と尋ねられました。50代と60代の女性でした。『お嫁に行く前ならいざ知らず、今更気にしてもしょうがないかしら』とお二人とも同じ前置きがありました。問われてもどう返答したら良いのやら。『気になるのでしたら治す方法は有りますよ』と答えたのですが。
 80歳代の女性に、最近歯の色が白くなくなってきたので、「ワワイトニング」してくださいと恥ずかしそうに言われたことも有ります。
 服装や、化粧は『身だしなみ』を整えるという範疇から、ある程度きれいにすることが社会的に要請されています。しかしながら、顔の造作を整えようと美容整形するとなると話はややこしくなります。
 前歯が抜けたままだったり、虫歯で黒かったりするのはエチケットに反するようにも思えるのですが、歯並びは一般常識ではどう考えられているのでしょうか?テレビに出る芸能人などは売れてくるとさすがに治されるようです。
 歯の寿命を損なわないよう十分気をつけて、スマイルが魅力を増すよう治すのは悪いことではないですよね。ご自分も、そのスマイルを見る周りの方もハッピーになるのではないでしょうか。

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2007年11月27日 (火)

世界中を南極にしよう

 11月25(日),26(月)とパシフィコ横浜で行われた歯列矯正の学会に参加して、歯科関係の新しい知識の吸収に努めた後、26日午後6時30分から『南極から地球と人類の未来を考える』という元朝日新聞論説委員の柴田鉄治先生の講演会(如蘭会トワイライト・フォーラム)にはしごしてきました。
 南極大陸は人類がその存在を知ってから僅か200年あまりにすぎなく、アムンゼン、スコット、白瀬による南極点一番乗り競争も今から96年前のことでした。日本が「宗谷」により南極の研究に本格的に着手してから50年経ったようですが、オゾンホールを発見したり、雪原にちらばる大量の隕石を収集したりして結構科学的意義のある業績を残しているようです。
 南極が発見されてから各国は、昔の植民地争奪競争さながら領有権や利権を主張し合ったようですが、軍事利用の禁止、科学観察の自由と国際協力、領有権の凍結、環境保全を骨子とした『南極条約』を1959年に制定し、61年に発効、現在は世界の米国、ロシアを始め主だった国46カ国が加盟しているとのことです。1966年に国際連合総会で採択された『月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約』(宇宙条約)はこの『南極条約』を参照されたようです。
 『南極条約』により、南極は国境もなければ軍事基地もない人類の理想を先取りした平和な地となっていて、柴田氏は2回長期に滞在してきたそうですが、各国の観察隊との交流を通じてそれを実感してきたそうです。世界各地で国対国、民族間の争いが起こっていますが、世界はみな人類の共有財産という考え方を持つようになれば戦争は起こりようもないし、現に南極ではそれができているのだから、その考えを世界に広める啓蒙活動を生きている限りやっていこうと思うと決意を述べられていました。

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2007年7月26日 (木)

意外な統計

 「女は見た目が10割」(鈴木由加里著、平凡社新書)の第一章に日本の化粧品市場規模はヨーロッパ六カ国(フランス、ドイツ、イギリス、イタリア、スペイン、スイス)を合わせたもののほぼ倍であると書かれていました。その六カ国を合わせた人口は日本の約2.5倍ですから、一人当たりの消費額は5倍となります。驚きの数字だと思いませんか?これだけ差があるということは、化粧に対して根本的な考え方の違いがありそうです。この本によると、日本人は目の化粧に重点を置くとのことです。
 そういえば、視線恐怖症は日本人に多い精神障害と心理学の本に言及されてます。(「まなざしの心理学」福井康之著、創元社)日本に長く滞在していたアメリカ人と日本のテレビドラマの役者の演技について話し合ったことがありますが、彼には微妙な視線の演技が理解できないようでした。
 道徳的には、容貌よりも心が大切だと言われますが、実際は皆かなり容貌に左右されているのでしょう。付き合う期間が長くなりますと、本質勝負となるのでしょうが。
 視線でなく、口元に注目するようになると歯科医としての私の仕事ももっと忙しくなるのかもしれません。先日、前歯の歯並びと、差し歯をきれいにしたお嬢様の母親が、しばらくぶりに結婚式で会った親戚の人達から、娘が美人になったと褒められたそうです。きれいな歯並びで口元が魅力的になったからだと思うと言っていただきました。嬉しくなりました。

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2007年3月20日 (火)

闘病生活2

 ガンの手術後の療養生活を元気に送っている方から興味あるお話を伺いました。その方がおっしゃるには、医者の言うこと通りにしていたら何もせずにじっとしていなければならない。これでは活力が弱まってしまう。だから、なるべく手術前の生活に戻して、病人らしくしないようにと考えているそうです。とはいっても、身体から発する危険信号には逆らわず無理はしないようにしなければならないそうです。
 ご主人が車いす生活となり、10年間介護した年配の女性から食事療法に付いて下記のようなお話を伺いました。病院からの指示では、毎日決まったカロリーの食事を与えることになっていたのですが、毎日同じようですと命が小さくなるように観察されたようです。そこで、元気があって食欲が旺盛なときは少し多めに与えて、そのかわり翌日は少なくするなどして、1週間のトータルカロリーを一定にして日々には変化を持たせるようにしたそうです。そうしたところ元気がよみがえって表情がはつらつとしてきたそうです。10年間命が長らえたのは本人のバイオリズムに従ったからだとおっしゃっていました。
 体調や気分に合わせた対応をしたほうが良いということなのでしょうが、これには状態を正確に判断する観察眼が必要なわけで、けっこう難しいことのように考えます。教訓として記憶しておくことにします。

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2006年9月30日 (土)

マルクスより強烈なマルクス主義者

 人との出会いの場で伺ったお話には、自分の中にしまっておいてはもったいなく思えて、多くの人に言い伝えたい話もありました。そんな経験もこの欄で語ってみたいと思います。
 数年前に北海道大学で開催された臨床心理学に関した学会に、ふとした思いつきで参加しました。そのプログラムに、医学部精神科教授の退官記念講演というのがありまして、退官記念講演というものがどのようなものかに興味が湧き、拝聴することにしました。講演内容は、正直のところ詳しくは覚えてないのですが、臨床心理学がどのように発展したかについてだったように記憶してます。その講演には、教授が知り合った多数の著名心理学者とのエピソードが語られまして、この教授自身も相当な研究者であったことが推測されましたが、自説を滔々と捲し上げるという雰囲気ではなく、それぞれの学説について客観的なコメントを述べるというような講演でした。 
 講演会後の懇親会の参加を募る案内がありまして、さきの教授にお話を伺える機会があるかもしれないと期待して参加しました。会は非常にこじんまりしたものでして、頃合いを見つけて教授に近づき、質問させていただきました。『人はだれしもこの世の中で自分なりの金字塔を建てたいと思い努力するし、それを誇示しようとするものだと思っています。大学の研究者であれば、学説を立てそれがいかに正当なものであるかを力説したがるものだと考えていましたが、先生のお話にはそれが感じられませんでした。どうしてなのでしょうか?』と、不躾にも伺ってみました。すると微笑みながら、『マルクス主義者はマルクスより強烈なマルクス主義者になるものなのだ…………』という答えをいただきました。
意味がおわかりでしょうか?メールをいただければ私なりの解釈をお知らせします。teru@e-ndc.com

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