2011年11月20日 (日)

バカの壁

Photo タイトルが気に入らなくて敬遠していた8年程前ベストセラーになった本ですが,手に取ってみるとなるほどなるほどという感じで引き込まれてしまいました。読んでみて,やはり、タイトルのバカという言葉は不似合いと思います。

 歯科医という職業は患者さんに、ご自身の口腔内の現状やら,治療方針、治療経過をわかりやすく説明しなければなりません。昔は,先生にお任せしますからよろしくやってくださいといわれたこともありましたが(今もたまにそのようにいわれることもあります)、きちんと説明して納得していただかないと治療にとりかかれません。患者さんにとっては聞き慣れない実体がイメージしにくいことを説明しなければならないので,丁寧にお話ししているつもりですが,中にはご理解していただけないこともあります。

 この本によると人には知りたくない事柄に対しては、耳をかそうとしない、あるいた興味のないことは理解しようとしないという側面があるということです。その極端な例が,イスラム原理主義とアメリカの対立だそうです。どう考えても、これら両者がいくら話し合っても,分かり合えるようにはなりそうもありません。
 通常歯科の現場では,患者さんはこちらの話しを理解しようとしてくださっているので、そんなに苦労することもないのですが,患者さんのためによかれと信ずることを分かりやすく説明するよう努力し続けるしかないですね。分かっていただけなかったら,分かっていただける時まで待つしかありません。
 
 その他この本には、『夜と霧』でアウシュビッツの体験を書かれたフランケルの話しから,人生の意味について言及してました。いろいろ自分の生き方も考えさせられました。


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2007年4月11日 (水)

人間は脳で食べている

 「人間は脳で食べている」(ちくま新書、伏木亨著)を読んでみました。第1章は『「情報」は最高の調味料』とのっけから挑発的なパンチで一般人の常識を揺るがす文章で書き出されています。生理的な、感覚的な「おいしさ」ということも、無意識にいろいろな経験や情報の網を通り抜けて「おいしい」と認識されるようです。
 日本酒でもワインでも、名の通った物は「おいしい」ものとしてありがたくいただくからより「おいしく」感じるようです。また、そういう風味を「おいしい」と感じるのが「通」ということになると、「通」と言われるようにするにはそのように感じるよう自分の味覚を学習しなければならなくなります。ますますいわゆる「おいしさ」があやしいものに思えてきます。
 話が飛躍しますが、「サブリミナル・マインド」(中公新書、下條信輔著)などを読むと自分は何で、何をどう考えているのかわからなくなります。人間の感覚、記憶や考えがどこでどう発生してどう意識化するのか、非常にあやふやなもののようです。
 結局、深く詮索しても訳が分からなくなるだけのようですので、普通にあたりまえに自分の履歴が感じさせる快い味覚を楽しんでいければと思いました。

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