ある患者さんの思いで-9
宮田歯科で勤務していた時から歯科治療をさせていただいていた患者さんが1ヶ月前にお亡くなりになったと、娘さんが治療にいらっして伝えてくださいました。昭和2年生まれの方でしたので、享年82歳でした.最初に担当させていただいた時から、歯は半分以上失われていましたし、お体も病気がちのようでした。もう30年も前のことですので、考えてみますと当時の年齢は私の今の年齢より若かったことになります。
横浜の青葉区の私の診療室まで2時間以上かけていらっしていただいていたので、お近くの信頼のおけ先生をご紹介させていただいたのですが、気が進まないと通っていただいていました。亡くなる5ヶ月前のこの4月に1年半ぶりにいらっしゃったときは、いつにもまして歯の状態が悪化しているなと感じたのですが、そうとうガンが進行していたようです。2年前の時点で、余命半年と告げられたそうです。娘さんのお話では、死ぬまで食事がちゃんと出来たと感謝してましたとのことで、嬉しく思いました。
思い起こせば、この患者さんのご主人も、宮田歯科で私が担当していまして、総義歯を作ったのですが、それまで入れ歯で苦労していたのが嘘のようで、何でも噛めるとよろこんでいただきました。ご主人は4年前に亡くなったのですが、やはり食事には苦労しなかったと聞いていました。奥様が歯の具合が悪くなって、横浜まで行くというと、『歯を全部抜いて、自分みたいに総入れ歯にすれば虫歯や歯周病で痛い思いをすることなく、何でも噛めるから、歯を抜いてこい』と言われたとおっしゃっていました。その都度、ご主人のように総入れ歯で何でも噛める人は多くいないのだから、歯の手入れをして、自分の歯を1本でも2本でも多く残したほうが、具合よく噛めるのですよと毎回のようにお話ししたのを思い出します。『おだやか』という形容がぴったりなご夫人でした。ご冥福をお祈りします。
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